2022年度採択プログラム

2022年度の「スカラシップ」採択プログラムは、下記に決定いたしました。


採択者:浜田誠太郎

研究テーマ:「話し合うための演技について」

研究費使途:旅費、観劇費、書籍代、勉強会運営費ほか


【概要】

 演技は「説得の術」として成立してきた歴史を持っている。いかに相手を納得させ、取り込むか。そのために論理や構成だけではなく、感覚的な刺激や感情までも視野に入れ、対象を魅了する。この演技は、古代の弁論術から現在まで技術として使われているものだ。これは目の前の一人や数人の説得、群衆へのアジテーションにも拡大しうる一方で、自分の手足や心肺、細胞や皮脂の統率にも使えるだろう。

 必ずしも「全体主義」的に統制された状況を想起する必要はなく、それぞれが自由になれるようなファシリテーションや、俳優を慮った演出も可能だろう(もちろんこれを訝しむこともまた可能である)。技術としての演技を考えるならばこれらは対等に扱わなければならない。

 いわゆる演劇に関わっていようといまいと、話し合いが必要な場面はたくさんある。そのとき意気揚々と説得の術を巧みに使いこなすものもあれば、それゆえにテーブル自体から遠ざかるものもある。これは一貫することなく、ひとつのなかで使いこなす領域や遠ざかる領域などが離れてあり、入れ替わることもある。強引にテーブルにつかせることもまた、説得の術の範疇だろう。

 もうちょっと、別の話し合いを考えたい。離れた領域どうしの話し合いは演じることができるだろうか。あるいは「演技」で考えてはいけないのだろうか。どこでも同じように考えられるわけでもなく、また同じように考えてはいけないのかもしれない。ひとまず、たくさん話し合って考えたい。

(浜田誠太郎)


【浜田誠太郎を採択した理由】

 スカラシップ事業は、本年で4年目となります。年々、応募者の研究テーマも、演技に関する考察が深くなっており、いずれの応募者も今後の研究を期待できるものでした。以下、浜田誠太郎さんを採択させていただいた理由となります。

・社会的行為としての「演技」についての考察であり、スカラシップの趣旨にそっている。

・狭義の「演じる」という行為から一歩離れて、人の社会的役割に「話し合い=判断」の契機を持ち込もうとする、ハラスメント問題やライブ/配信環境など、様々な切り口へと展開が可能なテーマで、スタニスラフスキー研究をする浜田さんの独創性が感じられるテーマである。

 BARACKEは、浜田誠太郎さんを2023年3月31日まで支援いたします。どうぞ皆さんのご支援お願いいたします。


 また昨年度は、少数ではありますが、当活動へのご寄付をいただきました。いただいた寄付金は、全額対象者へ振込をさせていただきましたことを報告させていただきます。

 コロナ禍で様々な芸術的試み、様々な制度的枠組みが立ち上がり、芸術の必要性が社会に声高く訴えられるようになりました。私たちは、そんな第一線で活躍する人たちの下支えになれるように、そして同時にこの大きな波に呑まれないよう、誰でもがさっと手を取り合って助け合えるような、カジュアルな助成団体を目指しています。こうした輪が10人、100人と個々人によって紡がれていくことを願っています。

(横田宇雄)

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