2021年度採択プログラム
2021年度の「スカラシップ」採択プログラムは、下記に決定いたしました。
採択者:植村朔也
研究テーマ:リレーショナル・シアター論
研究費使途:旅費、観劇費、書籍代ほか
【植村朔也を採択した理由】
今年度は募集から採択までが大幅に遅れたこともあり、他薦者からの応募がメインとなりました。スカラシップも三年目となり、当活動が求める人材が自然と集まるようになってきたように思います。その意味で、応募者のどの方も甲乙つけがたい形となりました。
植村さんの研究テーマは、「リレーショナル・アート」の概念を用いて、上演作品の芸術性を再評価するものです。近年、ようやく問題視されてきた「ハラスメント」と芸術性の関係は、特に氏が得意とする分野となるでしょう。
植村さんは、若い才能があるだけでなく、演劇上演をフレームから見渡そうとしています。とはいえ、それは批評家然とした「視る態度」ではなく、作品それ自体を、演劇経験という主観性によって風穴を開けようとする態度であるように私は感じています。それは、「劇団」や「芸術業界」「芸能界」という閉鎖的にならんとする群れに対して、あなたたち/自分たちもまた生活者/個人であるのだ、という当たり前の事実をもって、軽やかかつ優美に切り込みを入れるような態度なのです。
BARACKEは、植村さんを2021年3月31日まで支援いたします。どうぞ皆さんのご支援お願いいたします。
また、2022年度の募集は今年12月から行う予定です。是非皆様の自薦他薦をお待ちしております。(横田宇雄)
【採択プログラムについて(植村朔也)】
リレーショナル・アートとはキュレーターのニコラ・ブリオーが提起した概念で、人と物ではなく人と人の関係性を主題化するものである。それだけにパフォーマンスとの相性は良く、ハンス=ティース・レーマンもポストドラマ演劇との親近性をすでに認めている。しかし「リレーショナル・シアター」とは舞台における関係性の美学の実践ではない。アートにおける人間関係の変容を社会に投げ返そうとするリレーショナル・アートの論理を、稽古場と舞台のそれに見出すのである。創作プロセスの「美的な」あり方を通じ健全なクリエーションのありかを描出することが「リレーショナル・シアター」論の第一の目的である。
【プロフィール】
植村朔也(Uemura Sakuya)
批評家。1998年12月22日、千葉県生まれ。東京はるかに主宰。東京大学大学院表象文化論コース修士課程所属。スペースノットブランクの「保存記録」、小田尚稔の演劇の「広報」を務める。悲劇喜劇2021年3月号に「リレーショナル・シアター」を掲載。過去の上演作品に『ぷろうざ』がある。
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